混み合ったバスの中でのことだ。着飾った40歳代の母親と席に座った高校生くらいの娘、中学生の息子がなにやら口げんかしている。怒鳴るのではない。ぼそぼそ会話をかぶせ合っているだけなのだが、会話の内容が恐ろしい。母「あれ、電話出ないなパパ」娘「殺し合いやってんじゃね? 明日新聞出たりして」母「なに言うの? 混むはね。みんな遊びにいくのかな?」娘「水商売なんじゃない?」母「なに言ってるの。通勤の人だっているよ」娘「どうだっていいじゃん。そうやって中学んときいじめにあってきたんだ」母「あってないじゃん、誰によ」娘「歯医者の娘だよあいつ」息子、死んだような目で「ああ、いたいた、電話来てたね」娘「バーカ、余計な口出しすんじゃねえよ」まるでやくざだ。父親の暴力の話をしきりに切り出す。娘「あんなマジな目してぶんなぐる奴いねえよ、しまいに人殺すよ、ムショいったら」母「そんなことないわよッ」娘「あんなのどうだっていいけど、あたしたちの名に傷がつくじゃん」なんて会話だろう。聞いてる方も辛い。思わずバスを降りてくる娘の目を見た。息子と同じ。死んでいた。
その国の将軍様は
後継者を育てるのが下手なんでしょう
自分が倒れても
実は倒れていないことにするくらいしか
方策が見当たらないとはね
黒澤明の「影武者」の物語のようだ
国民も
いつその馬鹿馬鹿しさに気づくのやら
かって日本でも
最高権力者さまは
トイレにお入りになられても
○○○はしない
と信じられていたそうな
しかしアメリカから
パイプを加えレーバンをかけた一人の軍人がやって来て
そのお方はただの人間になられた
本当はすっきりされたのではないか
と思う
将軍様も
ただの病人に戻ってすっきりしたいところだろう
そうするためには
しっかりした後継者がいるのだが
見当たらないのだ
おそらく・・・・
貧しさは物不足であるとも言えるが
人材の欠乏であるとも言える
このたびのことは
その最たる症例と言えるのではあるまいか
ネットはリアルではないという。クリック&ブリックともいう。なのに、ネットの印象はリアルでも同じという話もある。オフ会をしたことのある人なら理解できるこの不思議。僕の最初の経験はソフトバンクのライターの仕事をくれた男との出会いだ。メールやサイトや作品は見ていても、実際どんな男かも知らない。その彼が東京にやって来ると言うので八重洲口で待ち合わせた。一目で分かった。すぐに言った。「すぐ分かったよ」「なんでですか?」と関西訛の標準語で彼は驚いた。会っていて楽しかった。次は、今所属しているジャズバンドのリーダーとの出会いだった。抵抗感があった。初練習をスタジオにこもって2時間やるのだ。変な奴ならどうしようか? 密室で二人っきりになる。堪えられるかな? 少し遅れて彼がやって来た。「やあ、今日の調子どうですか? ぼちぼちやりましょう」いい感じの男だと思った。そして今でも続いている。この二つの話に共通するのは、人柄は文章の通りであり、会った時、その人柄は目の輝きのなかに観て取れるということだ。ネットで出会うことが恐ろしいのではなく、むしろネットで流れている文章の書き手を見抜けないほど想像力が落ちていることが恐ろしいのだ。赤毛のアンが現代に蘇ったらどんなにか嘆くことだろう・・・
黒澤明の名作、「影武者」実は死んでいないという報告を受けた信長が独り言を言う。「死んでくれたら助かるという気持ちがそう思わせたのかも知れない」というようなことを。将軍さまも影武者を持っているという。戦国時代がそのまま現代に生きている、それが北だ。毒殺も、派閥の死闘も、裏切りも、すべて生きているということだろう。いずれ政権が変わるのは必至だ。遠からず跡目争いが起こるだろうが、軍部が自分の言うことを聞かせやすい人物を押す、というのが歴史の流れだ。お世継ぎ様が、麻薬を輸出したり身内を重用したり、やたら女に手をつけたり酒乱だったりするのはまだ許せる範囲だ。勝てない戦いを引き起こした日本の僕が言えた義理ではないのだが、世界戦争を巻き起こしてやるか、というアホな政治信念を持った軍人を据えることだけは避けて欲しいと思うのだが。
苦しい時期に
ずいぶん聴いた
チャカ・デマス&プライヤーズ
いろいろヒットはあるけど
この曲が一番だった
まるで子守唄みたいに
乾いた心を癒してくれた
チャカ・デマスの太い声は
懐かしいおじちゃんの声
プライヤーズの甘い歌声は
憧れの兄ちゃんのカッコいい歌声
そのうちに眠くなって
和んでいった
僕のこころ
勢い込んで第二夜を見た。かみさんと猫二匹が昨晩以上に入り乱れて騒ぐ。黒猫くーちゃんは盛り上がるシーンになるとテレビの前に上がって、マタタビコール。僕よりもドラマが分かっているようだ。「おいママ、一本つけてくれよ」という顔と目。人間みたいな奴、しかたないなあ、とマタタビをあげると、右手で容器を持って貪る。その手つきが可笑しくて笑っていると、シーンは肝心なところを飛ばして変わってしまっていた。「なんだよ~、意味つながらねえじゃん」とぼやきながらも気を取り直す。おお、盛り上がってきた~~、と熱が入り始めたとたん、電波が乱れて画面と音声がバラバラに、アンテナをいじっているうちにコマーシャル。今度は息子が降りてきて猫をぎゃあぎゃあ言わせて遊ぶ。事態は最悪の展開へ。息子が猫に飽きて二階へ上がり、やっと落ち着いて見れると思った瞬間、危ない女葉月の最後の密告書を、もうあぶデカが開いて読んでいるシーン。そして、あっと言う間にピアノ・コンサートのラストへ。ついに、夫婦の合唱。「なんだよ~、砂の器のパクリかよ、これ~~~」
昨夜偶然夫婦で見た。が、それが問題だった。もとは自費出版の本だという。トリックをいろいろちりばめてあり、心地よいサスペンス展開。特に、実体のない電話の声がお化けのようで怖い。同性愛の葉月の出現も気味が悪い。昔捨てられた女の存在もホラーっぽい。配役もかなり贅沢である。それらすべては、今夜へ、と。***場面の切り替わりに次のトリックへのヒントがある。重要な場面に限ってかみさんがいろいろ話しかける。「あなた、このミニベロが安くていいんじゃない?」(買おうかなと思っている自転車の話)とか、「くーちゃん、また蛾を採ってきたんだよ」とか。しまいには、その、黒猫くーちゃんがまたたび欲しさに画面の前にたちはだかって小物を散らかし始める。結局重要なヒントをすべて見落とす。ドラマ慣れしたかみさんが言う、今回の最大の黒幕が当たっているかどうかは今夜の楽しみにおいておく。★そんなかみさんだが、時々始まった数分で犯人を当ててしまう神業を持つ。こつは一つだという。俳優を見て判断するのだ。主役を別にすれば、相手は次にギャラの高い人間ということになるのだそうだ。***だとすれば、「氷の華」の場合は?
眠れないときは神経のどこかが起きているんだ。パソコンで言えば電源が入っている状態。目を閉じてもブンブンうなり声が聞こえる。そして、昼間の出来事を反芻している。そんなとき、いつも聞こえてくる歌がある。懐かしい歌。「い~つの、こと~でしょ~?思い出してご~らん~、あんなこと~、こんな~こと~、あ~った~でしょ~♪」小学校で歌わされた歌で、特に気に入っているのでもないのに、なぜか耳について離れなくなる。そしてどこまでも繰り返す。僕は、密かにこれを〔悪魔の子守歌〕と名付けている。こういう歌って、みんなそれぞれあるみたいですね。なぜかみんな可愛い歌なんだな。ある人なんか、「メリーさんの羊」だったりするという。きっと皆、小学生の頃出来た脳細胞のあたりまで脳が溶解してしまい、子供脳に戻っているんかも知れないな。みなさんの悪魔の子守歌はなんですか?
あれから1億年もたってしまったんだ。まるで昨日の光景のように映像が流れる。「気をつけて監視の仕事をするんだよ」 僕が乗ったロケットは無事にこの星にたどり着いたけれど、迎えの便が来ないままなのだ。つまり地球が滅び去ったのだとしたら、迎えは永遠に来ない。諦めたわけじゃないけど、持て余した時間を使って1000年前から意識してチャレンジしていたことがある。ちょうど今から100年前にやっと出来るようになった。それは、ガーシュインの歌を歌いながら踊ることだった。ロボットには無理だって言われていたんだ。だけど、僕はやったよ、マシュー博士。大声で叫びたいよ、僕は歌って踊れるんだって。***そのとき声が響いた。「よかった、上手にできたね、君は僕の誇りだよ」 マシュー博士だ。1億年も前の博士の声だ。そうか、僕は歌って踊れる才能もプログラムされてたのか。「ありがとう、博士、僕も努力をしましたよ」 荒涼たる小惑星の崖っぷちでロボットが踊っている。ガーシュインの、アイ、ガット・リズムを歌いながら。いつまでも、いつまでも、踊っている・・・
「子供の頃から運がなかったの。好きな男の子が出来ると、決まってお金持ちの子が現れて奪っていった。あたしん家は余裕がなかったから、お弁当がいつも茶色いって馬鹿にされた。黄色い卵も、赤いトマトも、ピンクのたいでんぶも入っていない。タコのカタチにこんがり焼けたソーセージなんて夢のまた夢。今度だって、大好きな大好きな彼を、職場の若い娘が奪ってしまったから、あたしこんな・・・」 キツネは目をパチクリさせた。「ダカラッテ 短絡的スギルネ」「だって、夢も希望もないんだもの。こうするしかないでしょ」「ダカラッテ ココニ来ルコトハナイ デショ?」「いいの。もうお薬飲んだんだし、なんの未練もないんだし・・・」「君ハナイカモ知レナイケド アソコ・・・」と、図書館のロビーを指さした。「帰ルベキデショ・・・」 女は驚いてそっちを見た。そこには、憔悴しきった男が立っていた。泣きはらした真っ赤な目をして・・・***「気がついた! 気がついた! 先生、気がついた!」男は喜んで病室中駆け回った。「良かったね、すっかり胃は洗浄かけたから、もう大丈夫・・・」女はうつろな目を開けて男の顔を見つめた。今し方、一匹の白キツネと会話していたのを思い出した瞬間、止めどなく涙があふれた。

